東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)135号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が、原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、引用例の方法の技術内容を誤認した結果、本願発明と引用例の方法との相違点に対する判断を誤り、ひいて、本願発明は引用例の記載内容に基づき当業者の容易に発明することができる程度のものであるとした点において、判断を誤つたものであり、違法たるを免れない。すなわち、本件審決の、引用例の記載内容の認定及び本願発明の構成要件中(1)、(2)、(3)及び(5)の各構成要件が引用例により従来公知である旨の認定は、原告の認めて争わないところであるところ、本願発明の構成要件(4)に関しては、いずれも成立に争いのない甲第二号証(本願の昭和三十九年二月二十八日付手続補正による全文訂正明細書)及び同第三号証(昭和四十年一月二十七日付手続補正書)の発明の詳細な説明の項には、「ニトロベンゼン及び他の単核芳香族炭化水素を液相中で連続水素添加するには、アミン生成物、即ちアニリン又は他の相応するモノアミノ単核芳香族化合物を溶剤として、液相の九五重量%以上の割合で使用し、かつ特にニトロ化合物の添加量を変えるようにその工程をコントロールすることによつて液相中のアミン生成物の濃度を出来るだけ一〇〇%近くに保つのが有利であるのが判明した。この条件では常圧で沸点又はその近くで操作し、かつ、水素添加を急速かつ安全に実施し得ることが判つた。反応は著しい発熱反応であるが、沸点又はその近くで操作することによつて、反応熱の若干又は全てを反応混合物を蒸発させるのに有利に使用することができる。」、「アミン生成物の沸点は水の沸点より高く、従つて反応中に形成した水は、流出蒸気として反応容器から極めて急速に除去される。蒸気を冷却し凝縮した際、凝縮物は二相に、即ち水相とアミン生成物相に分離し、このものから生成物を回収する。反応混合物の蒸気量が反応生成物の形成量を越える場合には、アミン生成物の量を反応容器に戻して、そこで定常状態に保つ。」、「驚くべきことには、アミン生成物の不純物含有量はまつたく僅かであり、……水素添加の間に形成される不純物を減少せしめる効果を得ることができる。」との記載があり、右記載と当事者間に争いのない本願発明の要旨とを総合すれば、本願発明は、右記載のような知見の下に、構成要件(1)から(5)までの構成をとつたものであり、構成要件(4)は、反応混合物から反応中に生成する水とアニリンを蒸発させ、その蒸気を凝縮して目的物質であるアニリンの溜出物を得る工程であることが認められる。一方、成立に争いのない甲第四号証(引用例)、特に、その記載中の「本出願人は、微細に分散した触媒体が液体中に懸濁状態で均一に維持され、反応中に生成した水が実質上全部反応ゾーンから除去される、すなわち別個の水層が生成されず触媒表面が水でぬれていないような条件下で方法を行なう場合、芳香族ニトロ、……化合物の液相水素添加により、芳香族アミンが有効に生成し高い触媒活性が維持されることを発見した。」、「水素添加中の温度は室温から操作条件下での液体の沸点付近までの温度が可能である。一般に、水素添加の速度は高温における方が大きい。アニリンを作るニトロベンゼンの水素添加においては一〇〇度C付近の温度が有利であると考えられるが、その理由はこの温度では副反応により生成する不純物量が少なくかつ反応中生成する水が反応ゾーンを通るガスにより急速に除去されるためである。」、「水素添加の速度は、水素分圧を一〇倍にすると二倍になる。ニトロベンゼンのアニリンへの水素添加は、高圧にするための経費のかかる装置の設計及び建設の必要性を防ぐため、約三〇気圧の圧力で有利に行うことができる。」、「アニリン溶液中のニトロベンゼンの最初の水素添加は塔1中で行われ、塔1からの反応混合物は導管9を通り最終的水素添加のために塔2に運ばれる。次に反応混合物は導管10を通り塔2から取り出され、消費された触媒を除くためフイルタプレス11で瀘過される。液体に加わる圧力は、フイルタプレスを通り約大気圧にされ、瀘液は第2分離器12に運ばれる。」、「水素添加塔を約一〇〇度Cの温度で作動する場合、循環ガスにより搬出される蒸気は、少量のアニリン蒸気とともに主に水蒸気より成る。第一分離器7中にたまる凝縮物は、常温における水及びアニリンの相溶性が非常に低く、安定なエマルジヨンをつくる傾向が全くないため容易に水相及びアニリン層に分離する。こうして分離されたアニリン相は更に水素添加するために塔2に戻される。水相は、液体の圧力をほぼ大気圧に減少させる減圧弁を経て第2の分離器12に送られる。こうして分離器12に二つの液体反応生成物、すなわち少量のアニリンを溶解含有する水と少量の水と未反応ニトロベンゼンを溶解含有するアニリンが得られる。」の記載及びその特許請求の範囲の項の、引用例の方法は触媒が反応中に生成した水でぬれるのを防ぐため、右水を除去することを特徴とする方法である旨の記載並びに当事者間に争いのない本件審決認定の引用例の各記載内容を総合すれば、引用例の方法は、反応中に生成する水により触媒の表面がぬれないような条件下で反応させれば、芳香族アミンが有効に生成し、触媒活性が維持されるとの知見の下に、反応ゾーンにおける液体組成物中のニトロベンゼン及びアニリンのモル分率、水素添加の温度、圧力につき右のような反応のための最適なものを求め、これらの条件下で水素添加を行つて、反応中に生成する水を蒸気として除き、液体生成物から更に諸工程を経て目的物質たるアニリンを得るものであり、当事者間に争いのない本件審決認定の、「反応容器から出るガスに伴つて、主として水蒸気から成り、少量のアニリン蒸気を含む蒸気が溜出する。」、「溜出蒸気から分離したアニリンを反応容器に戻す。」旨の引用例の記載は、触媒の表面が水でぬれないようにするため、反応中に生成する水を溜去することを主眼とする工程に関するものであることが認められ、他にこれを左右するに足る証拠はなく、これらの事実を勘案すれば、本件審決認定の右引用例の記載は、本願発明の構成要件(4)と技術内容を異にするものというべく、本願発明の右構成要件を示唆するものではない。被告は、本願発明の構成要件(3)に定める温度は、原告の認めるとおり、引用例により公知であるから、構成要件(4)の構成をとることは容易である旨主張するが、当事者間に争いのない本件審決認定の引用例の記載によれば、右記載は、反応は、室温から反応条件下での液体の沸点付近までの温度で行う旨をいうにすぎず、前認定から明らかなとおり、引用例の方法は、副反応により生成する水が反応ゾーンを通るガスにより急速に除去されるから、一〇〇度C附近の温度が有利であるとし、反応中に生成する水を蒸発せしめて除去し、反応塔に残つた液体反応物から目的物質たるアニリンを得る方法であるに対し、本願発明においては、引用例において有利であるとはされていない反応における温度を積極的に採り入れ、同時に、液相中の芳香族化合物の濃度及び反応における気圧を規定して水素添加を行うことにより、構成要件(4)の構成をとることを可能とし、もつて、反応混合物より蒸発するアニリン蒸気から目的物質たるアニリンを得るものであるから、反応における温度が引用例により公知であるからといつて、本願発明の構成要件(4)の構成をとることが容易であるとすることはできない。
しかして、前掲甲第二、第三号証及び同第四号証並びにいずれも成立に争いのない甲第九、第十号証及び同第十三号証の一、二を総合すれば、本願発明においては、構成要件(4)が他の構成要件と相まつて、引用例の方法に比し、次のように、引用例にみられない効果を奏することが認められ、他に、これを左右するに足る証拠はない。すなわち、(1)本願発明における反応混合物は、液相中のアニリン九五重量%以上、ニトロベンゼン五重量%以下、水は著しく少なく、これをアニリンの沸点である一八四度C又はその近くで、かつ一〇気圧以下で水素添加するから、反応は迅速に行われ、アニリンはさかんに蒸発し、かつ蒸気中の水は極く少量であるため、アニリンの生産量は大きく、本願発明によつて得られるアニリンの量は、水素添加塔内の反応液一立方米当たり毎秒〇・〇二五kgにも及ぶに対し、引用例の方法の実施によつて得られるアニリンの量は、同じく一立方米当たり毎秒〇・〇〇二七kg程度にすぎない。(2)本願発明において水素添加ユニツトからの蒸気の凝縮物から水を除いたアニリン溜出物は、僅か〇・〇二%程度以下のニトロベンゼンを含有するにすぎない高純度のものであり、直ちに最終精製工程に送ることができるに対し、引用例の方法においては、反応塔から取り出される反応物は〇・五%もの未還元ニトロベンゼンを含むので、このままでは最終精溜工程に送ることはできない。(3)本願発明においては、引用例の方法におけるように、触媒瀘過装置及び触媒再分配装置を必要とせず、また、反応塔も小さいもので足りるから、プラント建設費、操業費を大巾に節約することができ、また、瀘過装置清掃のための労力は不要であり、清掃による時間的ロスがない。これに対し、引用例の方法においては反応後の触媒瀘過装置及び触媒再分配装置を必要とし、また、反応内容物を瀘過装置に排出するごとに瀘過装置を清掃する必要がある。(4)本願発明の場合の触媒の使用量は、ニトロベンゼン一五〇〇kgにつき触媒一kg程度で足りるに対し、引用例の方法のそれは、ニトロベンゼン八三kgにつき触媒一kg程度を要するが、両者に共通に用いられるニツケル、珪藻土触媒は高価であるから、本願発明は、生産コストの低下に著大な貢献をする。(5)引用例の方法においては、作業員が瀘過器からの瀘滓の排出、フイルターの清掃の際有毒なアニリンを吸入し、あるいはこれに接触して中毒の危険があるが、本願発明においては、このような作業がないため、このような保健衛生上の危険はない。被告は、本願発明の効果は、すべて引用例の方法に内在するものである旨主張するが、前認定のとおり、本願発明の構成要件(4)は引用例に示されていない技術であり、右に認定した本願発明の効果は、構成要件(4)が他の構成要件と相まつて奏するものであるから、構成要件(4)以外の構成要件が引用例により公知のものであつても、本願発明の奏する効果をもつて引用例の方法に内在するものとすることはできない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容することとする。
〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯
原告は、昭和三十八年九月二十五日、名称を「第一級モノアミノ単核芳香族化合物の連続製法」とする発明につき、英国において一九六二年(昭和三十七年)九月二十四日及び一九六三年(昭和三十八年)九月十一日した出願による優先権を主張して、特許出願をしたところ、昭和四十一年三月十八日、拒絶査定を受けたので、同年六月二十七日、これに対する審判を請求し、昭和四一年審判第四、一〇一号事件として審理されたが、昭和四十七年五月十八日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年七月二十六日、原告に送達(出訴期間として三か月附加)された。
二 本願発明の要旨
(1)モノニトロ単核芳香族炭化水素の液相接触水素添加によつて第一級モノアミノ単核芳香族化合物を製造する場合、(2)液相中の第一級モノアミノ単核芳香族化合物の濃度を九五重量%以上にし、(3)かつ、水素添加を反応混合物の外見上の沸点又は沸点近くで、かつ、一〇気圧以下の気圧で行い、(4)反応熱の若干量を、反応混合物を蒸発させることによつて除去し、蒸気を凝縮し、水を凝縮物から分離し、(5)必要な場合には凝縮した第一級モノアミノ単核芳香族化合物の十分量を反応容器に回収し、その中で定常状態に保つようにすることを特徴とする第一級モノアミノ単核芳香族化合物の連続製法。
三 本件審決理由の要点
本願発明の要旨は、前項掲記のとおりと認められるところ、原査定の拒絶理由は、本願発明は、米国特許第二、二九二、八七九号明細書(以下「引用例」という。)の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第二十九条第二項の規定に該当し、特許を受けることができない、というにあり、これに対し、請求人(原告)は、ジエームス・クリフオード・ラツデルの宣誓口述書を提出し、次のように主張する。すなわち、
(1) 引用例の方法では、溶剤としてのアミンのモル量を被還元化合物のモル量よりも大きくしているが、その程度は、ニトロベンゼンについては、ニトロベンゼン約二七%に対しアニリン約七二%が望ましいとされており、これからは、本願発明におけるような少なくとも九五%という多量のアミンを存在させることは想到しえない。
(2) 引用例の方法の最適反応圧力は三〇気圧であり、右方法では本願発明におけるような大気圧での作業はしないものと推定される。
(3) 引用例の方法の最適反応温度は、反応混合物の沸点よりはるかに低い約一〇〇度Cであり、右方法では本願発明におけるような反応混合物の沸点での操作は避けねばならないものと推定される。
(4) 本願発明で行つているアミンと水とを溜去して反応熱を消費し、かつ若干のアミンを反応系に戻して条件を一定にすることについては、引用例には全く記載されていない。
請求人の右主張について検討するに、(1)の点については、なるほど、引用例には、ニトロベンゼンからアニリンを製造する場合、ニトロベンゼン約二七%に対しアニリン約七二%の量比が望ましい旨の記載はあるが、同時に、溶剤としてのアミンのモル分率がニトロ化合物等の被還元物質のモル分率より大きい、換言すれば、被還元物質の存在量の方が相対的に少ないことが必要である旨記載されており(一頁右欄一三行ないし一八行)、この範囲内で量比を種々変更してみる程度のことは当業者が当然に試みるべき程度のことに属する。(2)の点について、引用例には大気圧から約二〇〇気圧までの圧力下に反応を行う旨が明記してある(一頁右欄末行ないし二頁左欄三行)。してみれば、最適反応圧力が三〇気圧である旨の記載があるからといつて、それだけから大気圧(或いはその付近)での反応が行われないと推論することは、根拠を欠くものというほかない。(3)の点について、引用例には室温から反応条件下での液体の沸点付近までの温度で反応を行う旨が明記してあり(一頁右欄四二頁ないし四五頁)、最適反応温度が一〇〇度C附近である旨の記載があることだけから反応混合物の沸点付近での反応が行われていないと推論することは、根拠を欠くものである。(4)の点について、引用例には、反応容器から出るガスに伴つて、主として水蒸気から成り、少量のアニリン蒸気を含む蒸気が溜出する旨(二頁右欄一四行ないし一八行)及び溜出蒸気から分離したアニリンを反応容器に戻す旨(二頁右欄二四行、二五行)の記載があるし、反応を定常状態に保つことは連続操作のための当然の措置であるから、右の点の主張もまた根拠がない。また、ジエームス・クリフオード・ラツデルの宣誓口述書は、本願発明については、請求人が工業的に実施している本願発明の一実施態様について極めて概括的に述べているにすぎず、本願発明と引用例の方法との効果上の差異についても、単に、「本願発明による場合のアニリンの生産量は極めて高く、匹敵する大きさの引用例に開示された型の水素化プラトンにおいて実施できるよりも遥かに大きい」旨述べているだけで、それを裏付けるような根拠は示されていない。
結局、請求人の主張は、いずれも根拠がなく、本件出願は拒絶をするを相当とする。
四 本件審決を取り消すべき事由
本件審決が請求人の主張に対する判断においてした引用例の記載内容の認定及び本願発明の構成要件(前記二参照)のうち、(1)、(2)、(3)及び(5)の各構成要件が引用例によつて公知である旨の認定は、いずれも争わないが、本件審決は、本願発明の構成要件(4)につき、引用例の技術内容を誤認したため、本願発明と引用例の方法とのこの点の相違に対する判断を誤つた結果、本願発明をもつて引用例の記載内容に基づき当業者が容易に発明することができたものであるとした点において、判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである。すなわち、本願発明は、構成要件(4)として、「反応熱の若干量を、反応混合物を蒸発することによつて除去し、蒸気を凝縮し、水を凝縮物から分離」するものであるが、反応体の液相中の第一級モノアミノ単核芳香族化合物の濃度を九五重量%以上にし(構成要件(2))、水素添加を反応混合物の外見上の沸点又は沸点近くで、かつ一〇気圧以下の気圧で行う(構成要件(3))から、水素添加はアニリンの沸点に相当する一八四度C又はその近くで行われ、その結果、反応混合物を蒸発せしめて生ずる蒸気は、アニリンが大部分で、水は極く少量にすぎず、この水は反応混合物の蒸気を凝縮した凝縮物から分離されるのである。これに対し、引用例の方法においては、本件審決認定のように、最適反応温度が一〇〇度C附近としているが、その理由は、引用例のその他の記載から明らかなように、この温度では副反応により生成する不純物量が少なく、かつ反応中生成する水が反応ゾーンを通るガスにより急速に除去されるためであり、したがつて、本件審決が引用例の記載として認定したように、「反応容器から出るガスに伴つて、主として水蒸気から成り、少量のアニリン蒸気を含む蒸気が溜出する。」のである。右のことから明らかなように、本願発明の構成要件(4)は、水の蒸発のほかアニリンの蒸発を目的とする工程であるに対し、本件審決認定の引用例の右記載にかかる工程は、水の蒸発のみを本来の目的とする工程であるから、両者は全くその技術内容を異にするものであり、引用例の右記載事項をもつてしては、到底本願発明の構成要件(4)に関する記載があるものとすることはできない。しかして、本願発明においては、構成要件(4)は他の構成要件、とくに(2)、(3)の構成要件と相まつて、次のような効果を奏するが、この効果は、引用例の方法に比して極めてすぐれており、顕著な効果である。すなわち、(1)本願発明においては、反応体の液相中のアニリンは九五重量%以上、したがつて、ニトロベンゼンは五重量%以下であるところ、これをアニリンの沸点一八四度C又はその近く、かつ一〇気圧以下で水素添加を行うから、反応は迅速に行われ、アニリンはさかんに蒸発するため、この蒸気から生産するアニリンの量を極めて大きくする。本願発明によるアニリンの標準生産量は、水素添加塔内の反応液一立方メートル当たり毎秒〇・〇二五kgであるに対し(甲第十一号証の一に記載された装置一立方メートル当り毎秒アニリン生産量の数値〇・〇三八kgは、〇・〇二八kgの誤記であることは、計算上明らかである。)、引用例の方法においては一〇〇度Cで水素添加を行うから反応が遅く、したがつて、アニリンの生産量は水素添加塔内の反応液一立方メートル当たり毎秒〇・〇〇二七kgにすぎない。(2)本願発明における反応混合物の蒸気から水を除いたアニリン溜出物は僅かに〇・〇〇〇〇五%以下のニトロベンゼンを含有するにすぎない高純度のものであるから、直ちに最終精製工程に送ることができるが、引用例の方法においては、反応塔から取り出された反応混合物は未還元ニトロベンゼン〇・五%を含む不純なもので、これを直ちに最終的精溜に送ることはできず、更に水素添加を繰り返すため反応容器に戻す必要が生ずる。(3)本願発明においては、反応容器中で生成する水はさかんに蒸発して除かれるため、反応混合物に含まれる水の量は〇・一%よりも低いから、触媒活性が高く、触媒の寿命が長いのみならず、引用例の方法におけるような触媒瀘過装置触媒再分配装置を必要とせず、反応塔も小さいもので足りるから、プラント建設費、操業費を大巾に節約することができ、また、瀘過装置清掃のための労力は不要であり、清掃による時間的ロスがない。これに対し、引用例の方法においては、反応器中に水が多量に含まれ、反応が遅いので、触媒活性が低く、触媒の寿命が短いうえ、反応後の触媒瀘過装置及び触媒再分配装置を必要とし、また、反応内容物を瀘過装置に排出するごとに瀘過装置を清掃する必要がある。(4)触媒活性と触媒の寿命に関連し、本願発明における触媒の使用量は、ニトロベンゼン一、五〇〇kgにつき触媒一kgで足りるに対し、引用例の方法においては、ニトロベンゼン八三kgにつき触媒一kgを要するところ、両者に共通に用いられるニツケル、珪藻土触媒は高価であるから、本願発明にあつては、生産コストの低下に著大な貢献をする。(5)アニリンは有毒物質であるところ、引用例の方法においては、瀘過器のフイルターがアニリンで濡れている間に瀘滓を排出し、フイルターを清掃する必要があるから、作業員がアニリンを吸入したり、これに接触して中毒を起す危険があるが、本願発明においては、作業員がアニリンと物理的に接触する必要がないので、そのような保健衛生上の危険はない。